ヒプノセラピー(催眠療法)について

ヒプノセラピーは、潜在意識に働きかけ、悩みの原因や問題解決の糸口を見つけ、心にポジティブな変化を促す心理療法です。科学的にも効果が認められていて、臨床心理士のクリニックや、精神科医の診療でも行われています。

人間の意識は、「顕在意識(表面意識)」と「潜在意識(深層意識)」に分かれていると考えられています。(潜在意識の奥にある「無意識」を加える場合もあります)。分析・判断・評価・意志など、論理的な思考をしているときに働いている意識を「顕在意識」、感性や感覚、本能、習慣などと関係している自覚のない意識を「潜在意識」と言います。

顕在意識が働いているときの脳波はベータ波です。心身がリラックスすると、脳波はベータ波からアルファ波になり、潜在意識が活性化します。このアルファ波の状態と、そこからさらに深く心の静まったシータ波の状態のことを催眠状態と言います。シータ波は覚醒と睡眠の境界で、睡眠(デルタ波の状態)に入る前と睡眠から目覚める時にシータ波になります。朝目覚めてすぐ、意識がまだ朦朧としているときに、考えてもみなかった新しいアイデアが思い浮かんだりするのは、脳波がシータ波の状態なので、潜在意識から情報を得やすくなっているためです。

「三つ子の魂百まで」と言いますが、近年の脳科学の研究で、生まれてから6-7歳まで子供は、覚醒時の脳波がシータ波の状態であるために、耳に入る言語や親の価値観や習慣などをスポンジのように吸収することが明らかになりました。脳波がシータ波である6-7歳までに、生きていくために必要な思考や行動の基本的なパターン、プログラムが潜在意識に記憶されます。そして、日常生活において、本人が意識することなく、自動的にそのブログラムが実行されているのです。

コンピューターが使われ始めた頃、ソフトのプログラミングに問題があって不具合が起きることが多々ありましたが、人間の場合も、本人にとって有益でないプログラミングをしてしまう場合があります。
たとえば、親から「お前は頭が悪い」と子供の頃に頻繁に言われていた人の場合、「自分は頭が悪い」と潜在意識レベルで信じてしまっているので、「頭が悪いから努力しても無駄」と考えて努力しない⇒努力しなかったからテストの点数が悪い⇒「やっぱり自分は頭が悪い」と確認する⇒「頭が悪いから努力しても無駄」という“信心”が深まる、というように、同じパターンを何度も何度も繰り返し、「自分は頭が悪いから努力しても無駄」という考えが、潜在意識に深く刻み込まれてしまうようになります。

そのような“洗脳”や自分自身の思い込みや過去のトラウマから心を解放して、望ましいプログラムに変えるために使われるのが、ヒプノセラピーです。ヒプノセラピーでは、潜在意識に記憶されている過去の出来事や感情にアクセスすることができるので、表面意識では忘れてしまっている過去の出来事を思い出したり、自覚していない悩みの根本原因を探ったりすることができます。また、暗示にかかりやすい催眠状態に誘導し、望ましい暗示をすることによって、潜在意識にプログラムされて自動化している好ましくない思考・行動パターン(悪い癖)をより望ましいものに変えることもできます。

ヒプノセラピーのセッションでは潜在意識にポジティブな変化が起きるので、まるで“魔法”のように悩みが即座に解決する場合が多々あるのですが、ヒプノセラピストは“マジシャン”ではありません。

「セラピストがクライアントさんの潜在意識にアクセスして好ましいプログラムに書き換える」というものではなく、あくまでもクライアントさんが主導で、セラピストはクライアントさんが望んでいる結果や問題解決の糸口が導き出せるようにお手伝いするヘルパーです。クライアントさんご自身の意志や自助努力、自分の心と向き合う姿勢などが成功の鍵となります。