人間中心療法(Person-Centred Therapy)について
人間中心療法は、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズ(1902-1987)によって創始されたセラピーで、クライアント中心療法とも呼ばれています。
人間中心療法では、「人間は、自分自身を理解し、自己概念や態度を変え、自己実現のために成長するための膨大なリソースをすでに持っている」という考えに基づき、相談者の主体性を尊重し、本人が自分の持つリソースを十分に活かすことができるようにカウンセリングを行います。
私自身の経験ですが・・・
私が臨床催眠療法士の資格を取った学校の創立者は、オーストラリアに臨床催眠療法を広めた第一人者で、この人間中心療法をとても重んじている先生(博士)でした。
臨床催眠療法士になるためのトレーニングで一番自分にとって難しかったのは、カウンセリングでした。英語で相談者の話を聴きながら、言葉だけではなく、表情や体に現れる感情の微妙な動きにも注意し、重要な言葉をメモしなければならず、なおかつ、相談者自身がリソースにアクセスできるようにどう質問すればいいかを考え、その上、どの催眠療法のテクニックが相談者にとって最も適しているかを判断しなければならなかったんです。先生がすごく厳しくて、質問に少しでも私の主観が入ると、“Lead!(リード)”と言われて止められるので、本当に緊張しました。「リード!」というのは、「セラピストが相談者をリードしてはいけない(先導してはいけない)」という意味です。
臨床心理士やカウンセラーの人たちも一緒にトレーニングを受けていたのですが、みんな私と同じように“Lead”と何度も言われ、止められていたので、先生が特に厳しかったのかもしれませんが、あの恐怖だったトレーニングのおかげで、自分がいかに無意識のうちに自分自身の価値概念を交えて相談者の話を聴いているかに気づくことができ、とてもよかったと思っています。